「いいのかよ?こんなことしてて」
「ええんちゃう?まだ開店前やし。暇やろ?」
「てかグローブなんてどっから出したんだよ!」
「細かいこと気にしなや。行くで〜」
 
今はまだ夕方の5時前。
バイト先の焼肉店の広い駐車場で、平次と快斗は何故かキャッチボールをしていた。
いつもより早めに到着してしまって暇だったので、時間潰しにと平次がしようと言い出したのだ。
どこから持ってきたかは不明。
平次は持っていたボールを快斗めがけて思いっきり投げた。
 
「あっバカ!」
 
勢い余って快斗のグローブからボールは大きく逸れて、慌てて拾いに行く。
 
「普通に投げてても面白ないな〜。せや!古今東西しよ」
「は?」
「古今東西甘いもの!」
「お前さっきから全然脈絡ねーんだけど」
 
平次は構わずボールを投げようとする。
 
「ええから!かちわり!」
「え、アイスクリーム!」
「イチゴミルク」
「チョコパフェ!」
「糖蜜パイ」
「てかそれ実在のモンじゃねーじゃねーし!そんならカボチャジュース!」
「ガーナココア」
「キャラメル!」
「スイカアイス」
「牛乳プリン!」
「きのこの山」
「たけのこの里!」
「やわらかチョコサンド」
「あ〜〜も〜〜チョコ食いて〜〜ッ!!」
 
快斗は思いっきりボールを投げつけた。
平次はそれを難なくキャッチした。
ボールをグローブから取ると、満面の笑みを浮かべて快斗を見遣った。
 
「快斗名前言わへんかったから負けやな。罰ゲームや」
「お前がチョコレートの名前ばっかり出すからだろ〜〜!!」
「自分やって連呼してたやん」
「罰ゲームってなにするんだよ」
「オレとつきおーて」
「は?何言って…」
「オレとつきおーて」
「お前…冗談だろ?」
「冗談でんな事言えるかい。さっきオレが言うたもん、最初から頭文字だけ繋げてみ」
「頭文字って…」
 
オレはIQ400の頭脳をフル稼働して、さっき平次が発した言葉を思い出していた。
 
「甘露アメ…イチゴミルク…糖蜜パイ…ガーナココア…スイカ……」
 
快斗はそこまで言って顔を真っ赤にさせた。
 
「お…お前!もしかしてこれが言いたくてキャッチボールなんて…!!」
「せや。直接言うのは恥ずかし〜てな」
 
平次は顔を赤くしながらポリポリとほっぺを掻いた。
 
「こっちの方がよっぽど恥ずかしいぞ…」
 
快斗は呆れて項垂れた。
 
「そうかー?」
「そうだよ!そういや途中変な名前のが入ってたよな。無理やり繋げる為だったのか…」
「ちょっと思いつかんくなってな〜。で、返事は?」
「…ちゃんと言ったら考えてやる」
「ちゃんと告白したらつきおーてくれるん?」
「だから!考えるだけだって!」
「好きや」
「へ…平……」
「快斗が好きなんや」
「……」
「これでつきおーてくれる?」
「…お前ほんと、バカ」
「バカ言うなや!」
「バカじゃなくてなんだよ!見てみろよ!周り外野だらけじゃねーか!!」
「あ…」
 
いつの間にか平次と快斗の周りには、店員や客が集まって来ていた。
二人の言い合いが面白くて、みんな興味津々で二人を見守っていた。
 
「そういう訳ですんで、オレらカップルなりました〜。祝福してや!」
 
平次は快斗の肩を抱くと、そう周りにアピールした。
一斉に外野は歓声を上げた。
 
「なッ何がそういう訳だよ!オレまだ返事してねーだろが!!」
「Yesやないんか?」
「兄ちゃんらお似合いやで!つきおーたり!」
「オッチャンなかなかエエ事言うわ!な!?快斗」
「な!?じゃねーッ!!」
「往生際悪すぎるで快斗」
「お前のせーだろがッ」
「…ほんならこれで観念し」
 
そう言ったかと思うと、平次は快斗の身体を更に自分に引き寄せ、
唇に軽くキスをした。
 
「ほ〜れ。これでマーキング完了や!快斗はオレのもんやな」
「兄ちゃんやるな〜」
「おおきに♪」
「お…オレのファーストキスッ!!!!」
「ええやんか、減るもんやなし」
「減る〜〜!!!ッてかファーストキスは一回ぽっきりだろ!!!何でお前に捧げなきゃなんねーんだよ!!!」
「オレ快斗にファーストキス捧げられたんや。嬉しわ〜」
「捧げてねーしッ!!」
「男やったら終わったことグダグダ言いなや」
「お…お前な〜〜」
「何ならも一回したろか?」
「ヤッ…ヤダ!!」
 
平次が顔を近づけてきたので、快斗は思いっきり顔を反らせた。
 
「オレの恋人いけずやろ〜?これから先めっちゃ不安やわ」
「恥ずかしいだけやて。心配せんでもな、二人っきりになったら甘えてくるて!」
「オッチャンもそう思うか!?そうなん?快斗」

平次は瞳を輝かせ、快斗を覗き込んだ。
「オ…オレが知るかッ!!」
 
こうして外野が見守る中、めでたく(?)漫才コンビ顔負けのバカップルが誕生したのであった。





カウンター810記念におバカな二人でも書いてみようかと…。
というかアホな平次が書きたかっただけだったり。


うちの家の前に焼肉屋とパスタ屋があって、その駐車場でほんとにキャッチボールしてる店員がいて、
こんな妄想してしまいました。
ほんと、どっからグローブ出したのかが気になってしょうがないです。
わざわざ持参したのかな…。
確かに2つの店の共有駐車場だから広くて理想のスペースなんだけど、何故キャッチボール。
車にボール当たったら店長に怒られるぞ。てか店長だったり?