「め…眼鏡、外せったら…」 「真っ赤になって可愛いな〜。やっぱこのままにしとこ」
「第一、邪魔だろ?キス…すんのに」
「角度に注意しとけば平気や」
服部はオレの唇にそっと触れた。
口付けが深くなると、少し眼鏡が頬に触れた。
冷たくて、ゾクリとする。
「…ん……っ」
「気持ち、ええか?」
「やっぱ…ダメだ…」
オレは少し息の上がった声で言った。
服部の瞳を見て、更に鼓動が早くなる。
眼鏡越しに見つめられると、どうも弱い。
そして、眼鏡の金属部分に身体が触れるのにも感じてしまう。
それを分かっててやってる服部は、本当に底意地が悪いと思う。
オレが感じているのを楽しそうに眺めている。
そんな顔にもゾクゾクしちまって。
普段はオレが主導権を握っているのに、こういう時は必ず服部が主導権を握ってしまう。
百戦錬磨な態度が気に食わない。
実際、色んな人間を相手にしてきたんだと思うけど。
好きだと告げられるだけで、そんな事はどうでも良くなってしまう。
なんでこんなヤツ、好きになったんだろう。
オレが嫌がる事を好んでやりたがる。
だけど嫌いになれないのは、なんでだろう。
瞳の奥の真実を知っているからかもしれない。
こいつの瞳にはオレしか映っていない。
オレが掴まえたかったのか、オレが掴まりたかったのか、今ではもう分からない。
だけど、捉えられてしまったから。
この上なく、惹かれてしまったから。
オレは服部の愛を受け入れた。
教師と生徒。しかも男と男。
禁断の恋なんて甘っちょろいもんじゃない。
だけど、手放す気なんてない。
服部も、きっと同じ気持ち。
だから、嫌いになれない。
口では悪態をつきながらも、結局は受け入れてしまう。
だったら、もう少し素直になろう。
意地を張ってたら、この幸せを逃してしまうかもしれない。
絶対に逃したくないモノは、自分で護らねば逃げて行ってしまう。
オレはほんの少しだけ、欲しがる素振りを見せた。
服部は嬉しそうに、頬を緩めた。
今のオレにはこれが精一杯。
少しずつ、頑張るから。
だから、気長に待っててくれよな?
もう、誰にもお前は渡したくないから――――…
end あ、あんまり甘くなかった…凹 |