平次は小さい頃から快斗を守る為に、ありとあらゆる術を教えられてきた。
平次の家、服部家は代々黒羽家に仕えている。
黒羽家には裏家業が存在し、それの手助けをするのも服部家の役目だった。
平次の役割は快斗を護り、裏家業の手助けをする事。
その為に血の滲む様な努力をした。
そして、何を置いても快斗が一番。
快斗の為に平次は存在する。
そう体中教え込まれてきた。
 
もったいなくも、黒羽家18代目当主盗一から直々に体術を教わったりもした。
そして今は幼い快斗に、大きくなったらお前が直接教えるのだ、と裏家業やその他諸々の事を伝授してもらった。
今思うと、当主は自分の死期が近いのを悟っていたのではあるまいか。

最後の当主からの言葉は
 
「くれぐれも快斗を頼む」
 
少し寂しげに微笑んだ当主は、その言葉を残し、最後の仕事へ出かけて行った。
そのまま当主は帰らぬ人となった。
裏家業の仕事中、何者かに殺されてしまったのだった。
恐らく代々黒羽家が追い求めていた宝石、パンドラを追う組織の手によって…
 
母親は早くに亡くなっており、父親を溺愛していた快斗は、父親の死を中々受け入れようとはしなかった。
平次はなすすべもなく、ただ快斗の傍に居る事しか出来なかった。
一ヵ月ほどして漸く落ち着き、もう大丈夫だろうと先代から教わった事を、快斗に教え始めた。
快斗は最初は虚ろであったが、段々と精気が甦り、驚くべき速さで吸収していった。
快斗は先代に似て利発で賢い。
運動神経も並ではなく、すぐに平次の教えなど必要ないくらいに成長していった。

快斗の成長を傍で見るのは楽しかった。
自分を兄のように慕ってくれるのも、嬉しい事だった。
だが平次にはまだ快斗に教えていない事が、一つだけあった。
その事が後々の平次を悩ます事になるとは、この時はまだ思いもしなかった。
 
それから4年。
快斗は16になった。
いよいよ裏家業を引き継げる歳になったのだ。
黒羽家の祖父、使用人たちはこの日を盛大に祝った。
もちろん、服部家の人々も盛大にお祝いした。
黒羽家の大広間で祝いの宴は催された。

平次は朝から落ち着か無かった。
快斗が16になったという事は、裏家業を引き継ぐとは別に、教えなければならない事があった。
そう、盗一に教わった事で、まだ快斗に教えていなかった事。
盗一からは快斗が16になったらお前が教えてやるのだ、と常日頃から言いつけられていた。
 
それを今夜、実行しなければならない。
緊張しない訳が無い。
平次は食事もろくに喉を通らず、そわそわしながら席を立った。
中庭に出て、呼吸を整える。
すると背後から声を掛けられた。
 
「平次!こんなとこで何してんだよ?」
 
快斗だった。
どうやら平次と一緒で宴から抜け出して来たようだった。
 
「オレは…ちょっと酒に酔うてな。酔い醒ましてたんや。それよりアカンやん?今日の主役が抜け出して来よってからに」
「だ〜って、ジイちゃんとか平次のオヤジとか浮かれ過ぎてちょっとついてけないって感じ。やたらと酒勧めるしさ、オレまだ未成年なのに」
「そんだけ嬉しいんやろ?先代が亡くなって皆寂しい思いしとったからな。これで快斗も裏家業継げるし…」
「キッド…か。何だか重いよな〜。こんだけ続いてると」
「大丈夫や。オレ達がついてるよって。何かあっても快斗はオレが護るから」
 
快斗は平次の言葉に無言で頷いた。
何かを考え込んでいるようだった。
平次はそんな快斗を見つめ、意を決して口を開いた。
 
「今夜、快斗ん部屋行くから、寝ずに待っとり」
「え?夜?」
「そうや。子守唄聞かしたるわ」
「ふ〜ん。分かった。じゃ、待ってるね!」
 
快斗は無邪気に微笑み、宴の席へと消えて行った。
 
(先代……)
 
平次は快斗の後姿に盗一の姿を重ね、心の中で呟いた。
 
 
午前零時。
服部邸と黒羽邸は同じ敷地内にある。
細い中道を潜り抜け、平次は黒羽邸へと入っていった。
いつも通い慣れている筈の場所だが、今日は違って見えた。
奥の部屋へと進んでいった。
突き当たりの部屋の隙間から光が漏れていた。
ちゃんと起きているらしい。
平次は逸る鼓動を抑えながら、部屋へ近づいた。
 
「快斗、入るで?」
 
平次は襖を開け中へ入った。
快斗はベッドの上で仰向けになり、本を読んでいた。
快斗の部屋には引き伸ばされた盗一の写真が壁に飾られている。
その写真を見て、平次は胸が痛んだ。
写真から目を逸らし、快斗を見遣った。
ベッドの上には本だけじゃなく、お菓子も散乱していた。
 
「寝る前に食べたら太るで」
「い〜もん、ちゃんと運動してるから」
 
快斗はベッドから起き上がり、平次の方へ向き直った。
その瞳は爛々としていた。
 
「ねえ、何かくれるの?誕生日だし、16になったし、ちょっと大人じゃん?いつもとはちょっと違うヤツかな?」
「快斗…」
「平…次…?」
 
平次は無意識の内に快斗をベッドへ押し倒していた。
視線がぶつかると、静かに顔を近づけて唇を重ねていた。
 
「そうや。今夜はオレが快斗を大人にしてやんで―――…」
「平……」
 
平次はそう言って、快斗の服を脱がしていった。
 
「や…何、すんだよ……」
「ええから、オレにまかしとき」
 
平次は胸の突起に軽く指で触れてみた。
快斗はピクンと身体を動かした。
それに気をよくし、今度は舌を這わせてみる。
舌で転がしてやると、快斗の口から甘い吐息が上がった。
 
「気持ちええやろ?」
「や…やだ…こんな、の…っ…」
「もっと気持ちよくしたんで…」
 
平次は胸の突起を舌で弄びながら、器用にズボンを脱がせていった。
 
「やあ……っ」
 
指で快斗の熱に触れてみる。
そこは先走りの蜜で溢れていた。
平次は快斗を可愛いく思い、指で先端を滑らせた。
 
「あ……っ…」
 
快斗の反応に満足し、今度は舌で蜜を絡め取った。
そのまま口に咥えて優しく愛撫を繰り返す。
 
「や…あ……っん……」
「気持ちええか?」
「や…やだ…へい……」
 
快斗は身をよじって抵抗するが、平次は構わず愛撫を続けた。
舌で舐めながら指で扱いてやると、益々快斗の息が上がっていった。
 
ここで止めるべきだった。
 
平次は盗一に教わった事を実行に移すつもりだった。
 
15になった夜。
平次は初めて盗一に抱かれた。
盗一の体臭が身体に染み付くくらいに、何度も何度も抱かれた。
主の性欲を満たすのも、服部家の人間の役割だと教えられた。
逆らう事があってはならない。
平次はその言葉通りに、盗一に身体を捧げた。
しばらくして、盗一から快斗が16になったら、お前が相手をしてやるのだと言いつけられた。
平次は素直に頷いた。
年上なので、ちゃんとリードしてやるのだ、とも言われた。
それから1年して盗一は死んでしまったが、言いつけは守らねばならない。
 
 
舌で湿らせた快斗の熱は、平次が受け入れるのに丁度良いくらいになった。
そう、本来なら平次がこの熱を受け入れねばならなかったのだ。
何度も何度も盗一に抱かれたのは、その為でもあるのだから…
だが、快斗の反応を見ていると、もっと啼かせてみたくなった。
本能のままに、快斗を扱く手を休めるどころか、益々強くした。
もっと聞きたい。もっと……
 
「や…あっ…あ……っん……」
 
快斗はあまりの事に目をギュッと瞑り、快楽をやり過ごそうとシーツを握り締めた。
限界が近かった。
 
「や…も…ダメ――――…ッ」
 
快斗は必死に平次を押しのけた。
寸での所で、平次の口の中に放つ事だけは免れた。
白い液体がシーツに飛び散る。
平次は無意識のままその蜜を指ですくい取り、快斗の足をグイッと押し広げた。
 
「ヤ……ヤダ……っ!」
 
快斗は顔を真っ赤にしながら平次を見上げたが、快斗の叫びなど全く届いていなかった。
平次は快斗の蕾に指を滑り込ませた。
快斗は小さく悲鳴を上げた。
 
「痛いか?快斗」
「ん……へい…じ……」
「力抜き。すぐ慣れるよって、ちぃと我慢しとき」
 
平次はそう言って快斗に口付けた。
薄く開いた唇から舌を滑り込ませ、快斗の舌を吸い上げた。
身体の力が抜け、指が動かしやすくなった。
ゆっくりと動かしてみる。
舌を絡ませているので、快斗からは甘い声が上がっている。
大丈夫そうだと判断し、指をもう一本増やし動かしてみる。
すると、快斗の身体が反応した。
どうやら感じるポイントだったらしい。
平次はそこを重点的に攻め立てた。
 
「ん……はぁ……ん……」
「もっと…もっと快斗の声聞かせてくれ……」
「あ…ん…へい…じ……」
 
平次は快斗の髪をゆっくりと撫でてやり、優しく耳元に囁いた。
 
「可愛ええで、快斗―――…」
 
そこから先は夢中で、平次にはもう猛る雄を止める余裕などなかった――――
 
 

横で眠る快斗を見つめ、平次は後悔の念に駆られていた。
父平蔵から口を酸っぱくして言われていた。
主に逆らう事があってはならない、と。
主に抱かれる事はあっても、その逆はあってはならない、と教えられてきたのに。

自分は快斗に何をした?
ちゃんと抱かれるつもりだったのだ。

なのに。
快斗の喘ぎ声を聞いたら、野性の本能が目覚めてしまった。
快斗が初めてなのが災いした。
自分がリードしなくては、と思ったのも裏目に出た。
繰り返す愛撫に過剰に反応する快斗があまりに可愛いくて、平次を激しく刺激した。

主導権は自分が握っていた。
抱くのも抱かれるのも、自分の思いのままだった。
快斗はただ、自分の為すがままに抱かれてしまっただけだ。
自分の責任だ。
主を抱くなど以ての外だ。
次はこうならないように気をつけねばならない。
自分がしっかりしていれば、大丈夫だ。
まだ…大丈夫なはずだ。
そう自分に言い聞かせた。
 
だが、それが大きな間違いだったと、すぐに気付かされる事になる。
 
 
しばらく快斗の髪を撫でていたが、快斗が寝返りをうった。
 
「快斗…起きたんか?」
「ん……」
 
快斗は寝起きで虚ろな眼を平次に向けていた。
視線で平次を捉えると、快斗はにっこりと微笑んだ。
 
「そういえば…ジイちゃんに聞いたことがあったんだ」
「何をや?」
「オレが16になったら特別な事が起こるって」
「え…?」
 
平次は僅かに動揺し、上体を起こした。
 
「その特別な事に関わった相手を、ずっと大事にしろって」
「快斗…」
「オレ、ずっと裏家業を継ぐことだと思ってたんだけど、違ったんだな。これって代々受け継がれてるしきたりのうちの一つなんだろ?」
「あ、ああ。16になったら快斗の相手するんや、ってずっと言われとった」
 
平次は複雑な思いで答えていた。
快斗の相手をするのは昔から決まっていた。
しかし、自分が受け入れる側なのに、教えに背いてしまった。
こんな自分は許されるのだろうか。
 
「今日だけじゃない、よね…?」
「快斗…?」
「ずっと、オレを抱いてくれるよね?」
「快斗…」
 
こんな快斗を見てしまったら、否定の言葉は出せなかった。
平次は快斗を見つめ、肯定の言葉を口にした。
快斗はほっとしたように微笑み、再び眠りについた。


先代…俺を、許してください…









変なもの書いてしましました…
何だこれ。
かっぺー声に惹かれて見たマウスが凄い萌えて、ご主人快斗様に仕える平次+新一+白馬が書きたい!!!
と思ったのに新一も白馬も出ない上に、何か盗平まで出てきてどうよこれ?ってなってしまいました…
あんまり面白くもないと思うのでこっれきり。続きは書きません。

ようするに何がしたかったかと言うと、平新白快が書きたかったけど失敗した☆ってヤツです(失笑)